言葉の情感を歌う

人の声は言葉がつけられる唯一の楽器です。今日、私たちが何気なく使っている言葉の一つ一つには長い歴史があり、日本人の心に伝えられてきた思いがこめられています。

日本の言葉は日本の庭園や仏像、山水画などの文化と同じように、この国の風土に包まれ育てられたものです。

春は霞、夏ほととぎす、秋の月,冬の真白き雪の朝,日本の四季は彩りと風情があやなすように訪れます。季節にはかすかな予感といとおしむような名残が漂い,それらが余情や余白を好む日本人の心と言葉になったのでしょう。

論理的で自己主張の強い外国語に比べ,日本の言葉が直截的な表現を避け遠回しに意思を伝えようとするのは,そこはかとなく移り行く日本の季節の感覚によるものと思われます。

日本のうたの歌唱は日本の風土にふさわしい姿でありたいものです。言葉の情感に思いをこめて心の琴線にふれる歌唱ができればと願っています。

山本健二