童謡・唱歌は心の里山

2014年(平成26年)は、“兎追いし”の「故郷」が大正3年6月の尋常小学唱歌(6)に発表されてから100年になる。私は1933年生まれ、昭和20年の敗戦の時、旧制中学1年だった。戦時下の小学校では勤労奉仕という名の畑仕事が多く、歌をまともに教わった記憶はない。しかしこの歌は自然に口ずさむことができる。

童謡・唱歌の多くは口承によって伝えられ、その中で人々の心に残る歌が、歌い継がれてきたのだろう。

2004年より童謡・唱歌の普及をライフワークとしている私は童謡・唱歌の会の始めに「故郷」を歌うことにしている。指導するようになって1年ほどたった時、歌詞が「思いやりに満ちた」言葉ではないかと気づいた。

  • 第1節で、先ず故郷の自然のことを歌っている
  • 第2節では、故郷の人々に思いをはせている
  • 第3節になって初めて自分の思いを歌っている

つまり自分のことよりも先ず他者を思う日本人の「思いやり」の歌であるからこそ我々は愛唱してやまないのだ。

今風に言えばEQ(Emotional Quotient)の歌である。さらに旋律は端正で清らか、この歌がある限り日本人の心から「思いやり」が消えることはないだろう。

大正3年は平成26年より100年前であるから明治の唱歌は全て、100年以上前に作られた歌となる。しかも戦後、音楽教材から次々と排除されてきたが、今でも歌われているのは、耳から入ると脳裏に定着する歌であるからだろう。

このような精神性豊かな言葉とメロディーを残してくれた明治・大正・昭和(戦前)の作詞・作曲家に対する尊敬の思いは尊崇の念へと高まっている。

2014.5.8 記